ページ内を移動するためのリンクです。

ホーム > 入院・面会のご案内 > Dr. からのワンポイント

Dr.からのワンポイント

筋膜リリース

 マスコミでも話題になっている筋膜リリース(ハイドロリリースとも)。筋膜とは筋肉を包む膜のことです。その筋膜が萎縮や癒着によって、肩こりや痛み、五十肩等状態を引き起こします。筋膜リリースとは、その筋膜の癒着を引きはがすことによって、筋肉を正常な状態に戻す方法です。
 筋膜リリースは、マッサージ、ストレッチなどでも行うことができます。
 注射で行う筋膜リリースは、超音波エコーの画像で筋膜を同定し、画像を見ながら細い針(当院では27ゲージ針)を筋膜まで刺入し、生理食塩水で注入しますが、当院では局所麻酔薬を注入しています。生理食塩水の方が効果的であると言う報告もありますが、当院では筋膜の剥離による痛みを訴えた患者さんがおられたため、局所麻酔薬を使用しています。
 筋膜リリースを行うと同時に、その他の痛みを引き起こす部位に注射(トリガーポイント注射)や末梢神経ブロックも併用しています(保険診療となります)。
 ただし、注射のみで治癒する訳ではありません。動きやすくなった肩が再び固まらないように、注射後のストレッチ等が非常に重要です。
 肩こりなどの痛みで長年お悩みの方は、外来受診をおすすめします。

麻酔科・痛み緩和診療部長 神谷和男




線維筋痛症とは

 線維筋痛症はご存知の方とご存知でない方の差が非常に大きく、患者さんもしくはご関係の方の知識・情報は、非常に膨大であり、時に教えられることもあります。以下はあまりご存知のない方への疾患の説明です。
 線維筋痛症は、過去から現在も含めたストレスによる脳の炎症が原因と言われ、全身の痛みに加え、関節のこわばり、不眠、うつ、疲労感、記憶障害、消化器症状や排尿障害など多くの病態を合併します。しかし、レントゲンなどの画像検査や通常の血液検査においても異常は認められないために、疾患の存在を疑う医師もいます。また治療が非常に困難であることからも、診察をされない医師もおられます。
 現在、数名の線維筋痛症患者さんの診療にあたっていますが、治療自体困難であることは事実であり、改善を認めるとは言えません。治療方針は、線維筋痛症診療ガイドラインを基本に、患者さんもしくはご関係からの情報も加え、また患者さんの希望などを総合し、患者さんができるだけ症状から緩和されることを目標としています。

(麻酔科・痛み緩和診療部長 神谷和男)

運動器の非特異性の痛みに対するK点ブロック

 運動器(骨、筋肉、関節、神経を総称する言葉で最近はロコモティブシステムと言われています)の痛みの中で、脊椎や神経に異常がなく、原因がはっきりしない痛みを非特異性の痛みといいます。このなかには、腰痛、首痛、肩こり、頭痛、手足のしびれなども含まれており、よく不定愁訴などといわれます。原因がわからないため、家族や職場の中でも理解が得られず、不安や不快を感じている人々がたくさんおられます。また、変形性脊椎症、頚肩腕症候群、線維筋痛症などと診断されても治療が功を奏さず、仕事、家事、学業などの日常生活に支障をきたしている方々もたくさんおられます。このような非特異性の痛みやしびれの原因解明はいまだ光明が見出されていません。治療も抗うつ剤、安定剤、心身医学的治療が選択されたりしますが、これといった効果的な治療がいまだ確立されていないのが現実です。
 2006年に国分正一先生(東北大学名誉教授、国立病院機構西多賀病院脊椎脊髄疾患研究センター長)が発案されたK点ブロックは機序は解明途上ですが、こうした運動器の非特異性の痛みやしびれに効果がある場合が非常に多くあります。当院においても、2009年以来、100名以上の患者さんにK点ブロックを行ってきましたが、90%以上の患者さんに症状の改善あるいは消失が得られるなどの効果が得られています。
 この方法は外来診療において、比較的安全かつ簡便に実施でき、他の神経ブロックのような副作用(血圧低下や出血など)も殆んどありません。K点は後頭骨の下部にあり、風池という漢方のツボの約1cm上にあります。この場所に麻酔剤を少量(1~2ml)注射するだけで、大きな効果が得られます。
対象とする症状は頭痛、眼精疲労、頚部痛、肩こり、腰痛、手足のしびれなどです。
K点ブロックで効果が得られるかどうかの予測は手や肘、肩、肩甲骨、足、太ももなどに圧痛(上から押した時の痛み)があるかどうかによって判断します。
この治療はまだ一般的ではありませんが、近い将来、運動器の非特異性の痛みの治療のひとつとして広く認められると思われます。

(中野 恵介)

糖尿病と手術

 近年糖尿病の患者さんが増加しています。それに伴い手術患者さんも糖尿病の治療を受けている方が多くなり、入院時の検査でかなり進んだ状態で見つかる場合もあります。血糖値が高い状態が続くと全身的に細い血管がダメージを受け、手術後の傷の治りが遅れたり感染しやすくなったりします。ヘモグロビンエーワンシーという血液検査が最近1~2ヶ月の血糖値を反映していますが、8.0%以上では血糖値の変動が大きく麻酔管理が難しいとされています。重症の糖尿病を合併している患者さんでは、しっかり治療していただいてから手術に望むことが理想ですが、痛みのためにコントロールができていない場合もあり、私どもの病院では状況に応じて対応しています。手術直後から、糖尿病食によるカロリー調節、経口糖尿病薬、インスリンを血糖値が適正な範囲になるように適宜使用します。低血糖となることは危険なので血糖値150~200mg/dl程度を良しとしています。

(副院長 佐藤根 敏彦)

喫煙と手術

 タバコの害についてはご存知のように、ご本人はもちろん受動喫煙の問題もあり、医療機関では全面禁煙の流れにあります。喫煙は煙に含まれる有害物質の肺への問題が取り上げられますが、含まれるニコチンの作用が手術を受ける場合に問題となります。ニコチンは脳に作用する依存性物質であり、かつ血管の収縮作用もあります。長年喫煙していると、動脈硬化が進み、心臓に血液を供給する冠状動脈、その他の臓器の血液の循環に障害をもたらします。高血圧の原因にもなります。手術創への血液の流れが障害され、脊椎手術では脊髄の血液循環も障害されることがいわれています。タバコに含まれる一酸化炭素は血液を運搬するヘモグロビンと結合しやすく組織への酸素供給の妨げになります。さらに喫煙は気道に慢性炎症を引き起こし過敏性が増していますので、麻酔を安全に行うために必要な気管挿管チューブを麻酔終了時に抜去した際、声帯の部位が痙攣を起こし気道が閉鎖され低酸素状態となる危険を生じさせる原因ともなります。気道分泌物も多くなり咳き込んで手術部位の痛みを強めることになります。できれば手術3週間前から禁煙しましょう。

(副院長 佐藤根 敏彦)

骨粗鬆症について

骨粗鬆症とは

 骨粗鬆症は、「骨塩量の減少によって骨微細構造の破綻をきたし骨強度が低下し骨折に対するリスクが高まった全身性疾患」と定義されています。70代で70%、80代で80%の女性が骨粗鬆症といわれています。体内では骨の組織は絶えず骨格を守るために生成される一方、他の組織に必要なカルシウム等を供給するために壊されており、このバランスが崩れると骨粗鬆症となります。

原因

 原発性骨粗鬆症が骨粗鬆症の90%以上としめ、女性では閉経後に出現し、男性に比べ発症時期が早いため、重症化しやすく骨折などの臨床的な問題を引き起こしやすいので、注意が必要です。この他の疾患(甲状腺、糖尿病、関節リウマチ、ステロイド剤服用など)が原因となり発症する続発性骨粗鬆症があります

症状・診断・治療

 症状は腰痛、骨折での居所の疼痛、腫脹などです。骨折は、脊髄、大腿骨頸部、手首などに起こりやすく、脊髄では圧迫骨折といい背骨がつぶれる形態が多く、痛みのため寝たきりの原因となります。

 診断は骨のエックス線写真、骨密度検査、血液尿検査をもとにおこないます。特に骨密度検査では成人平均(20-44才)の骨密度と比較して70%以下では骨粗鬆症と診断され薬物治療を行います。治療は薬物治療では骨の破壊を低下させる薬の使用が一般的です。他にカルシウムの吸収を良くする薬等もあります。日光はカルシウ吸収に重要で、骨は体を動かすことで構造を維持できるので運動療法も重要です。お日様にあたって出来るだけ歩きましょう。

(診療部長 澤田利匡)